大腰筋と走る速度の関係(2020年6月)

こんにちは。
パーソナルトレーニングジムLINKの氏家知樹です。

今回は、筑波大学の文献で『大腰筋と走る速度の関係』についてご紹介します。
走る方は聞いたことがあると思いますが、黒人のスプリンターの大腰筋はアジア人と比べて大きいという話は有名だと思います。
そして、黒人の速筋繊維は多く存在することも分かっています。
骨格もアジア人と比較すると違います。

分かりやすいのは身長ではないでしょうか。
外国人と日本人では平均身長に差があります。

日本の平均身長は170.7cm
アメリカの平均身長は176.3cm
オランダの平均身長は183.7cm

今は身長が高いアスリートも日本にいるため体形の差がない選手もいます。
しかし、平均身長でいけば体形の差はまだあるということです。

黒人の走る速度が速いの事実としてあるため、大腰筋が走るスピードに重要と考えられています。

ちなみに大腰筋の筋肉がどんなものかご紹介します。

青い部位が大腰筋です。

起始:浅頭-胸椎12番、腰椎1~4番椎体

   深頭ー腰椎の肋骨突起

停止:腸骨筋と大腿骨小転子

神経支配:脊髄神経L1~L4

機能:股関節屈曲0度(骨頭の求心位を保つ)

   股関節屈曲~45度(脊柱前湾)

   股関節屈曲45度~(屈曲での求心位を保つ)

大腰筋の拮抗筋は大殿筋やハムストリングスになります。

大腰筋は骨盤と背骨についているため、大腰筋を上手く使えることで下半身、体幹、上半身を上手く連結させる役割もあります。

日常生活やスポーツを行う上でとても大切な筋肉です。

では、今回の研究を見ていきましょう。

【対象】

大学陸上部の短距離選手 13名

ジュニア短距離選手 8名

大学サッカー部 20名

一般学生 8名

計 49名

【測定方法】

・等速性筋力測定置を用いて股関節屈曲、伸展筋力を角度60度、120度、180度で測定

・MRIで大腰筋の横断面積を算出

・50Mのタイムを測定

【結果および考察】

走る速度と大腰筋の横断面積の関係で優位な相関が認められた。

短距離走の選手は走るタイムと大腰筋横断面積の間に高い相関が認められた。

同じ様にジュニアの短距離選手にも相関が認められている。

しかし、サッカー選手と一般学生には走るタイムと大腰筋横断面積と相関が認められなかった。

つまり、今回の研究では走るタイムと大腰筋横断面積については短距離選手は相関があるけど、他の人には相関がなかったという結果が出たようです。

面白いですね!

これは大腰筋を上手く使えていない可能性がサッカー選手と一般学生にあるんじゃないかと想像できますね。

これがなぜ?なのかまでは今回の研究ではわからないのですが、

恐らく、走り方、走るスキル、競技特性などの違いから今回の結果が出たと思います。

この研究では、サッカー選手なのでサッカーはストップ&ゴーや方向転換など色々な方向に動く為、陸上とは動きが違うので走り方が違う可能性があります。

大腰筋などをより使う走り方を考えると腿を上げる高さが関係すると思いますが、

サッカー選手の場合は短距離の選手よりも腿を高くあげて走ることが少ないと思いますし、ポジションによっても変わってくるため、短距離選手の様な走り方をしていないことも考えらえます。

今回の研究でわかることは走るタイムをだすためには、

大腰筋を上手く使ったスプリントをした方が走るのが速いということは言えると思います。

そして、大腰筋を使って走るということはスキルとフィジカルも必要ということもわかります。

勘違いしてはいけないのがサッカー選手と一般学生に走るタイムと大腰筋横断面積に相関がなかったからといってサッカー選手と一般学生に大腰筋が必要ないというわけではありません。

可能性としてはサッカー選手が大腰筋を使える様になればさらにパフォーマンスが向上するのではないかという事も想像できます。

いかがだったでしょうか?

やっぱり、大腰筋は走るタイムを縮めるためには必要そうですよね。

トレーナーとしてはどんなトレーニングをすればいいかを考えることはまた楽しいですね。

まぁ単純に腿上げすればいいということではないのはわかると思います。

しかし、もっと文献を読んで大腰筋について勉強いこうと思います。

大腰筋を考えると走るだけでなく色んな動きに対して大切なんじゃないかと考えています。

また今度、ご紹介したいと思います。